sound village
「急いで。今のうちに
ここから出るよ。」
トイレの個室の扉を開け
キョロキョロ周りを確認しつつ
1号に指示を出す。
先に体を扉の隙間に滑りこませた
私を、彼が再び個室に引き戻した。
「何よ?私、会議あるんだけど。」
訝しさ満載で、1号を見遣る。
・・・嫌な予感がする。
一瞬、こちらから視線をそらし
何かを考えた様子の彼は
打って変わった眼差しを
再びこちらへ寄越す。
「なぁ、音村係長ーーー
さっきのお姉さん達も
期待してるみたいやし
オフィスラブーーー教えてよ。」
「えっ・・・」
本領を発揮したイケメンに
太刀打ちできるほどの
耐性は、私にはないーーー
言葉を発せられず
固まったままの私の唇が
近づいた吐息を感じる。
ゴクリ・・・
自分が唾液を飲んだ音が
耳の奥に響いた。