sound village
「すいません。この損益の数字を
ここにいれるだけでいいって
言われたんですけど…
貸借が合わなくて…」
単なるシミュレーション資料の
つもりで渡したんだろうが…
「貸してみな。」
電卓をたたき余白に検算を
メモ書きする。
「普通の損益計算と違うんだよ。
だからね、この場合は、
ここを合わすんぢゃなくて
原価ありきで考えるんだよ。」
そして気づく。
この資料のいい加減さにーーー
「神島くん。これ、誰に
頼まれた?」
これでは、合うはずがない。
やるだけ無駄だ。
神島くんに、この資料を
押し付けた人間が、隣の課の奴で
手にした資料の作成者が
テルテルの部下だと悟る。
「神島くん、もう帰りなさい。
こんないい加減な資料に
貴重な時間を割いてはダメだよ。」
「えっ?でも、今日中って…」
・・・人の目を盗んで
フッカケやがったなっ
バーロォオ
彼のデスク上の電話の
受話器をとり、覚え込んだ
内線番号を押した。