sound village
「柏木?!」
トイレの扉を慌てて開け
中をのぞく。
「怪我でもしたのか?!」
焦る俺を余所に、
飄々とした表情で
柏木は、驚きの台詞を投下した。
「神島。レンちゃん、
なかなか手強いで。
見てみ、これ。」
そういって、奴は前髪を
右手でかき揚げる。
・・・額にマジックペンで
ガッツリ書かれた文字・・・
「よりによって、デコに
『エロス』って書くか?フツー。」
『エロス』……って……
「それ、係長に書かれたのか?」
どんな状況で、勤務中に
上司から額にマジックで
『エロス』なんて書かれるんだ。
疑心暗鬼で聞けば。
「ちょっと、からかっただけや。
向こうの方が、大分と上手やな。」
苦笑し愚痴りながら、
奴は、ティッシュとテープを使い
器用に、額の『エロス』を
隠したのだった。