sound village
ロビーの混雑を避けながら
2人の方向へ進む。
口を開きかけた俺を見て
チビッコが自分の口元に
人差し指を立てるジェスチャーを
する。
「目立たないようにして。
こっち入って。」
小声で指示するチビッコの
キビキビした態度に、
思わず従う。
機材置場に連れ込まれたらしく
客の姿が完全に見えなくなって
漸くチビッコが笑顔を見せた。
「みんな来てくれたんだ。
ありがとう。」
そんなクリクリの瞳で
嬉しそうに言われると
無理矢理連れ出されたとも
若干、来たことを後悔してたとも
言えず、適当な言葉を求め
言い澱む。
「まだ開演まで時間あるな…」
腕時計を見ながら、そう呟き
チビッコがニンマリ笑った。
「みんなが一番会いたい人に
会わせてあげるね。
ライヴが始まったら女子の集団で
近づきにくくなるから。」
何かを思い出しているのか
生暖かい眼差しをして、
彼はいう。
「こっちだよ。」
そういって俺たちに
ついてくる様促す。