sound village
普通のオンナ ** sideレン/
“レンちゃん、大好き”
時々、柏木君の
ストレートな性格が
羨ましいと思ってしまう。
いや、本来の私は
柏木くん以上の直球オンナだ。
…ただし…恋愛を除く(苦笑)
「レンちゃん、そろそろ
行こうか。」
「そうだね。」
イヤホンを耳から
抜き取りながら答える。
舞台袖に集まる時間だ。
「だ~っ…毎度の事だけどさぁ…」
真月さんが胃の辺りを
さすりながらボヤく。
「「…吐きそう。」」
お互いの声が重なる。
口から何か産まれそうだよ。
本当に。
いつも以上に緊張するのは
あの三匹の前で唱うから…で。
毎度思うんだ。
こんな格好しておきながら
失敗したらどうしよう…とか。
音はずしたらどうするよ?!とか
そこへ更に…想定外に部下達に
この…色物姿を見られるとか…
あり得ないっ(泣)…つうの
「…やりにくいなぁ…」
「えっ?」
私のトホホな呟きを
真月さんは拾う。
「いや…こんな格好しといて
あの子達に指導とかってさぁ…
会社じゃ、私、ラブソング
唱う様なキャラじゃないんだよ。」
「ああ…なるほど。
私もそうだったな。」
真月さんが、ムカシを
懐かしむ表情でいう。