sound village

普段のカノジョ ** side神島




…ドキドキする。



いつもながらの
堂々とした表情なのに

いつもと違って
フェロモン大放出な
容貌にも…だけど…


係長が唱うところなんて
初めてみる。

…オカシナ所で、また、
噛んだりしないかとか…
間違わないだろうか?…とか
妙な心配で、心臓を吐き出し
そうだ。


盛り上げ上手な気質なのに
俺たちの新歓でも歌わなかったし
総務のチビッコと会わなきゃ
バンドやってる事すりゃ
知らなかったかもしれない。

…そういや…
佐藤係長の異動に至っては
歓迎会すらなかったな(笑)

「…ダメだ。心臓吐きそう。」

「お前は、係長の母親か。」


訳のわからないプレッシャーに
ボソリと呟けば、斐川に
つっこまれる。

「…柏木?」

いつもなら、速攻でツッコミを
入れてくるはずの柏木が
まさかの無言で、思わず様子を
うかがってしまった。


「お前ら、うるさい。はじまる。」

小声でボソッと咎めた
柏木の目線は、真っ直ぐ
目の前の音村係長に注がれていて


「お前がいうな。
お騒がせモノめ。」


斐川が咎めたけれど


“まあ、そういうなや。
役得やってんから、あれくらい
許してくれや。”


何となしに、心ここにあらず…
な、柏木の声が

ギターのイントロに
溶けて落ちた。





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