sound village



一曲目の、係長の甘いイメージは
二曲目以降感じる事がなかった。


衣装を変えた訳でもないのに
辛口な印象を受ける。


前方の客席で、ただただ
キャーキャー騒いでいた
ミーハーな女子共も今では
声を潜め、聞き入っている。


…このひとは…

あらゆる意味でプロだと思う。


本気で自分自身も
楽しいこの一時を味わい、
観客をも楽しませる。

それができるのは
ショーであることを忘れて
いないからだろう。


それは、戦術を駆使しようと
すればこそ…

無駄に熱くなれば、我を失う
バカでは勝てないスポーツと同じ

やはり…何かを極めようとすれば
無邪気に過程を楽しめる訳では
ないのかもしれない。


係長は…おそらく
今日のボーカルの中では
一番ウマイのだと思う。


…なのに…なぜ…

あんなキツそうな仕事を主として
趣味で歌を唱うのだろう?


…佐藤係長なら…


何か…知っているんだろうか?


音村係長が“今の生き方”を
選んだ理由をーーーー





< 297 / 625 >

この作品をシェア

pagetop