sound village
踏み出す時 **sideレン/
慌てて控え室に戻り
金髪のウィッグをはずし
Tシャツとデニムに着替え
会場に滑り込む。
「レンちゃん!こっち!」
潜めた声で、私の手首を掴み
誘導する啓太についていく。
啓太の行く先には…
「音村さんお疲れ様です。
かっこよかったぁ」
私の腕に絡み付きゴロゴロする
興奮ぎみのお姫様がいて。
「おおーっサンキュウ!
席取りさせて悪かったね」
「いいえっ。こんな事で
よろしければいくらでもっ。」
真月さん達のライヴは
私もコーラスで出たりするけど
基本、客席側から見たくて
啓太のカノジョの総務嬢に
場所取りを頼んでいたのだ。
「じゃあ、俺、行くから。」
「おうっ。また後でね。」
出番を控えた啓太がダッシュで
スタッフ用の出入口から
姿を消した。
啓太とは最後の一曲で
一緒に奏る予定だ。
「音村さんっ出てきたっ!
出てきたよっ!姐さんがっ」
「おおーっ!!」
おいおいそんなに引っ張ると
Tシャツが伸びるのだよ(笑)
お嬢さん
「音村さんといい…
真月さんといい…
キャーッ!!カッコいいーっ!!」
…そうです。
元はといえば、
このお姫さんは、私と真月さんの
大事な大事なファンです。
アマチュアな私たちの
数少ないライヴを観てくれて
はまってくれた勇者(笑)
…それを、たまたま居合わせた
啓太が、つまみ食いした訳です…