sound village
「すごいな…人懐っこいだけの
印象だったのに…カッコよく
見えるな。」
楽しそうに自分の持ち時間を
弾ききったチビッコの笑顔に
思わず呟けば
「は?普通に啓太は格好いい。
少なくとも俺よりは…
格段に立派な生き方を
していると思う。」
斐川が正面を向いたまま
はっきりと考えをのべる。
…だったら
…だったら…
「じゃあ、お前も立派に人生を
歩めばいいじゃねぇか。
欲張らないで今しかできない事を
選べばいいんじゃないかな?
…きっと係長は、そうしてる。
今できる最大限の事を
しているんだと思うよ。」
アイドル野郎と向かい合い
やっぱり外国人にしか見えない
風貌で歌う係長を見つめながら
ボソッと言葉にすれば
「神島。柏木。」
志を持った声が呼び掛ける。
2人して真中に立つ斐川を見れば
相も変わらず正面を見続けていて
…まるで、何かを
眼に焼き付けているような
斐川が言葉を紡ぐ。
「俺、仕事やめる。
やめて、アメリカに行く。」
「はっ?!」
…何でそうなる?!つか
何しに行くんだよ?!
「もう一度、バスケしてくる。」
斐川がーーー
揺らぐことのない瞳で
そう言った。