sound village
“まつき…?”
ああ…ビジュアル系の嫁か…
「どうぞ。」
電話に出るように促せば
どこの女子かと思うほど
こちらに気を遣い通話を
始める。
「久しぶり~なに?
どーしたの?珍しいね。
こんな時間に電話してくるとか。」
どうやら、親子と迄は言わないが
相当…歳の離れた兄弟くらいには
年齢差のある彼らは、それを
気にも留めてないように
フランクな会話を進める。
「はっ…?ちょっ、斐川くん。
今日、レンちゃんって休みなの?」
なるだけ、会話を聞かないよう
意識を逸らせていた俺に
話題がふられ、とっさに頷く。
…疲れが出たのだろう。
あの人は、自分の事に加えて
俺たちのーーーいや……
俺の…不完全燃焼のために
心も時間も割いてくれた。
「ぅえっ!?俺のカノジョも
有給休暇使って旅行行ってるっ
つーのっ」
……なんだ?
焦る啓太を眺め、状況を探る。
「ああ…もう…(泣)
わかったよぅ…(泣)
真月のいじめっこっ」
…なにを捩じ込まれているんだ?
自然と手が動いていた。
『なんだとっ啓太っ』
…普通に怖い…
イキナリ怒鳴られ、
思わずスマホを耳から離す。
まさか、途中で相手が
変わった等と思わない嫁の怒りを
成り行きで受け止めて。
「いや…あの…斐川です。」
そう名のったら
電話のムコウが沈黙になった。