sound village
「…柏木くん、ごめん…(泣)」
いつかのライヴで見せていた姿が
嘘のような小動物っぷり。
…師弟そろって、ソックリやな(笑)
…なんて、笑えるかいっ(怒)
レンちゃんの案件なんて
手伝ってない俺は、休まれたら
顔すら見られへんのに。
業務用携帯にすら
連絡する用事がないから
声だって…聞かれへんのに。
思わず溢しそうになる愚痴を
グッとこらえて、どうするか
考えを巡らせていれば
「おい、柏木。お前、何か用があって
ここに来たのじゃないのか?」
六法全書をペラペラ捲りながら
斐川が問う。
…完全に忘れてた…
コイツに伝言があって探しに
来たんやった。
「テルテルから伝言。
15:00からの打ち合わせ、お前も
同席してくれって。資料の準備
手伝もあるみたいやから、
昼一で来てくれってさ。」
「…そうか。わかった。」
ちょっと考えながらも
了解の回答を聞いて、
次の目的地へ向かうため
踵を返す。
「柏木くん。休憩して
いかないの?」
“いつもなら、おちょくって
行くじゃない?”
不思議そうなチビッ子の声に
振り返る。
「今日は、もう行くわ。
神島の昼飯買いに行ってくる。」
片手を軽く挙げて、
重い鉄扉を押し開けた。