sound village
 



『そもそも、斐川!!お前、
何普通に参加してんだよ!?
資料作りあるって、柏木に
伝言たのんだんだけど!!』


『その指示する人が、
参加しているのに?
俺はまだ、指示内容も
聞いてませんよ。』


『そりゃ、そうだな…』


こんな時でも冷静な斐川が
小憎たらしい。


……多分、この人は、

またキーを投げる。


この均衡を破るために、
自分に有利に働く方向へ。


そんなことは、俺だけでなく
全員分かっていた事だと思う。


だから、


『『『上!?』』』


係長の右手から、キーが頭上に
舞った時に、俺達は、コンマ数秒
動作に移る時間を浪費した。


『高い!!!』


利き手を目一杯突き上げるよう
頭上に伸ばし宙へ飛ぶけれども
斐川の高さに及ぶ訳はなくて


『くっ!!』


斐川の掌に、キーケースが
収まるも、苦々しいといった
視線を、アスファルトを蹴った係長へ
見舞う。


『…まさか!?』

驚愕する柏木


『残念だったな。ボーズ共。』


そういって、ポケットから
もうひとつ同じキーケースを
取り出して、真正面の車に向け
投げたその表情は…


もはや、上司じゃない。











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