sound village
『くっ…。』
隣で、斐川が息を呑む。
『柏木かな…』
佐藤係長を振り切り、
柏木がキーに手を伸ばす。
勝敗は、もうすぐ決まる。
その時、車の陰から
整備士数名を連れて
ヒョッコリ見知った姿が
顔を見せたと同時に、
悲鳴をあげる。
『のわあっ!!(泣)』
マズイ。あんな、小柄な身体に
追突されたら、アイツ大怪我じゃ
すまないぞ。
『啓太!!』
『避けろ!!』
咄嗟に、斐川と共に発した声を
捉えた、チビッコが身体を翻す。
まさしく、さっきまで居た場所に
係長と柏木が転がり込み
2人が弾いたキーケースが
植栽に向かい飛ぶ。
死闘を繰り広げた後等とは
思いもしないのだろう。
『あれっ?鍵が…』
アスファルトに転がる
肉塊状態な2人の事など
気にも留めないのか、
植栽からキーケースを
チビッコは拾い
ニッコリ笑みを浮かべる。
そして……
『はい。佐藤係長。
相変わらず、柏木くんと
仲良しですね。』
残酷な程、空気を読まずに、
そう吐いたセリフと共に
係長にキーケースを
手渡した。
『『マジか…』』
第三者が、キーを拾い
受け取った人間が勝者に
なるなんてーーーー
衝撃の結末に、斐川と2人、
言葉を失い、生きたシカバネ
状態の、柏木を見遣やった。