sound village
 



「神島ぁ!お前、何で
負けてんだよぉ!?」


「あ?先輩?」


「俺は、お前の勝利に
ベットしてたんだぞ!?
負けたんなら、さっさと
帰ってこいっ!!」


“次は負けんなよ”なんて
言いながら、席に戻っていく
様で、3階の窓際から、
その姿が見えなくなった。


「神島、アイツの“推しメン”
ってヤツは、お前なんだって
言ってたぞ。」


部長が、窓を見上げ
そういった。


「神島だけじゃない。
斐川も柏木も、佐藤も…
それぞれにいるらしいぞ。

……一体、何を推しているのか
よくわからんがな。

でも、はっきりしている事は、
いつでも、お前たちには、
戻ってくる場所があるって事だ。

俺も佐藤も、待ってるからな。

うちで、やる気があるなら、
いつ戻ってきてもいい。

何があっても、音村と佐藤が
何とかするだろう。
心配しないで、アメリカ
行ってこいよ。」


部長の言葉が、胸に響く。

競争の激しい職場だって事を
十分に承知してやってきただけに
多くを語らなくとも、
俺達を見守ってくれている
人がいるんだって…グッときた。


“さっさと、仕事に戻れよ”と
俺達に言い置き、勝利に浮かれた
佐藤係長と一緒に、部長は
出発したのだった。




 








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