sound village



「…音村、パソコン届けて
いいかぁ?満身創痍の所
悪いんだけど。俺も1人では
正直キツイんだわ。」


ちょっと、考えてから
珍しくテルテルが、
キャパオーバーを告げて。

「いいよ。ココで出来る
内容なら、メールしてよ。」


「助かる。柏木にさぁ…
商品分析頼んでんだけど。
アイツ、珍しく手こずってね。
フォロー頼むわ。」


サラッと頼まれた
柏木くんのフォロー。

…珍しいこともあるな。

柏木くんは、あれで中々
優秀な部下だ。

…問題児な一面はあれ、
そんな側面は、ちゃんと
TPOと、相手を見抜いて
やっている。


「珍しいね。何の案件?」

思い当たる節がなくて
確認すれば、テルテルの
口をついたのは、遠に
終ったと思っていた件で。


「二課の例のクソどもが
放置してトンズラこいた
出版社の尻拭い。

まあ…アイツが萌えないのも
すんげぇ分かるんだわ。」

“まあ…ひどい内容だよ?
あんなの素人作家丸出し。”
クライアントの悪口は、
私の前ですら、言わない
彼が言うのだ。

…相当低レベルなんだろう。


「要するに、アンタは、
元部下の尻拭いまで、
背負っていたわけね。」


「ん?俺の感覚としては、
クライアントに何らかの
経営ヒントを提案したいって
感じなんだけど。

先方には、うちの内情なんて
関係ないんだし、社としても
“オタクの経営プランは
ムリです。諦めなよ?”って
返すだけじゃ済まないだろ。」


そりゃ、まあ…
仰る通りでございまする。


「それで、新商品の方向性を
提案してお茶を濁すって
って訳ですな?」


テルテルの着地点を探る。


「言っても、二課の奴らには
内密に進めてる。最悪、
無かった事にもできるしな。
やり遂げるっつうよりは…」


右手をハンドルに、器用に
バックミラー越しに
後方を確認する姿を
目の端で捉える。









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