sound village



「柏木、出かけるぞ。
資料、出来てるな?」

何か、斐川に指示してから
佐藤係長は、同行予定の
柏木に準備をうながす。

「はい。車も押さえてます。」


パソコンの電源を落としながら
そう応える柏木は、確実に
昼下りの出来事をひきずって
いる様子だ。


「それじゃあ、俺たち、
営業先から、直帰するからな。
神島、あと頼むぞ。斐川も
行って欲しい取引先があるから
連絡するまで待機ヨロシクな。」


社内の何処かに、打合せに
行っていた佐藤係長が
戻るなり慌ただしく、そう
言い残して、部屋を後にした。


「いってきまぁ〜。」


軽口を叩きながら、
柏木は上司の後を追い、
出かけていった。


「神島ぁ。俺たちもやるぞ。」

「あ、はい。」

柏木のダルそうな背中を
見送る俺を先輩社員が促す。

「…見てみろ。神島。
佐藤のヤツ、あんな走って
あの体力だぜ。」

顎で窓の外、眼下の駐車場に
目をやれば、なにやら柏木を
おもちゃにしている係長と、
面倒臭そうな表情を
隠しもしない柏木に、
思わず吹き出してしまった。




  

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