sound village
チャンスを得たオトコ**side斐川
「あれ?斐川くんしかいないんだ?」
わが部署の扉を開けて、どこかの
乙女の様にこちらを覗き込み
そう、口を開いたのは…
「啓太?何の用だ。」
「ん?佐藤係長からの託でね。
音村係長のPC連れて行くから。」
佐藤係長と向かい合わせのデスクで
ガサゴソ作業をしながら、啓太は
用件を述べる。
「そうだ。柏木くんって…
…ヨカッタ…直帰だ。」
ホワイトボードを見てそう呟く
啓太に苦笑する。
何も知らなかったとはいえ、
拾った車のキーをワザワザ
佐藤係長に手渡してしまい、
ガッツリ柏木に怒られ
半泣き状態であった啓太は、
気の毒ではあったが正直笑えた。
「…電源…モバイル…マウス…
テンキー…キーボード…全部あるな。
じゃあ、またあとでね。斐川くん。」
「…?ああ。」
ブツブツ言いながら回収備品の
漏れをチェックしていた啓太が
ダンボール箱にそれらを納め
足早に立ち去っていった。
…あとで、何があるというのだろう?