sound village




数コールで、佐藤係長の声が
スピーカーの向こうから響く。


『どうした?斐川。』

雅な琴の音色をBGMに
コソコソと話している風だ。

…接待の邪魔でも
してしまっただろうか。

…自分のツメの甘さが招く
この状況に内心舌打ちをする。


「係長、申し訳ありません。
接待でしたか?」

『いや、違うよ。ヤボ用だ。
あ、もしかして到着した?』

相変わらず、察しの良い人
だと、つくづく思う。

「はい。それが、先程、
訪問先の社名を尋ねるのを
忘れてしまって。

郵便受けには、社名らしき
モノが何処にもなくて…
確認のため…」


行き届かない自分に嫌気で
語尾が不明瞭になってしまう。


『…ああ…そう…いえば、
言ってなかったな。…社名…

うん。そうだった。

(株)サウンド ビレッジ
…だ。普通に、インターホン
鳴らして、勝手に玄関開けて
いいから。』


“悪い。電波悪いから切るな”
そう言って、急に、バタバタと
係長は、通話をきってしまう。

「…え…?かっ、係長?」

…いつもなら、俺達の状態を
確認して、通話を終えるじゃ
ないか?!

まだ、ききたい事は
あったのに…

















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