sound village
何とも、合点のいかない
通話の終え方をして
スマホをジャケットに
収める。
…こんなところで、
モタモタしていても仕方ない。
さっさと使命を果たして
帰らなければならない。
「…?…結構、重いな。」
あと、数Kg重ければ
鼻から啓太を拉致ってきたと
いうに。
中途半端なんだよ。(怒)
目的のフロアに降り立ち、
扉に表示された室番を、
確認しながら進む。
…ここだ…
ルームナンバーを確認し
深い溜息をつく。
…苦手だ…営業なんて…
いや…営業職なんだが…
人見知りが明るみに
出ないように、どれだけ
日々心を砕いているか。
……神島や柏木からは
全く努力の甲斐が見えないと
酷評されたが…
明らかに不審な上司からの
指示に内心愚痴だらけの
自分を堪えながら、
インターホンを押し、
ドアノブを 押し下げた。
ドアは、難なく内側に押し開き
背中で空間を確保しつつ
荷物を運び入れ、玄関スペースで
社名を告げる。
「どうぞ。入って。」
奥から女性の声がして、
その不用心さに呆れつつ
啓太から預かった荷物を
再び持ち上げる。
そして磨りガラスの嵌った
扉を開けて、用件を
述べようとして固まった。