sound village
「どっ…どうして?!」
目の前のワンピース姿で
ダイニングチェアに
やたら姿勢良く直角に腰かけ、
首だけ捻りこちらを見た
女性が叫ぶ。
…叫びたいのは、
俺の方です。
………音村係長………
もはや、驚き過ぎて
声もでない俺を、じっと
見つめて、上司が苦笑した。
「…さては、テルテルに
ハメられたな?」
「俺は…佐藤係長の替わりで
取引先に…」
そこまで言って、ハッとする。
あの人…さっき…
“(株)サウンド ビレッジ”って
…言っていたよな…?
…イコール…“(株)音村 …?”
昭和臭漂うネーミングと
そんな瑣末なジョークに
引っかかった自分に赤面した。
「…で、なんて言われたの?」
…言えるものか
「コレを届ける様にと…。」
さっさと要件に置き替えて
ひきあげてしまいたい。
顔の熱には気づかないふりを
して、啓太に渡された箱を
手に、オズオズと近づく。
「ああ。パソコンか。」
ダンボール箱からのぞく
キーボードを見て、
音村係長は苦笑した。
「ありがとう。後は大丈夫。
バスケ練習やるんでしょ?
早く行っておいで。」
そう言って、手を振る。
……だけど……