sound village
一晩経ち、幾分冷静さを
取り戻した翌朝ーーーー
眼鏡をかけ忘れたせいで
若干ボヤける視界をそのままに
歯ブラシをくわえ、ハッとする。
「…あ…?」
……普通……告白したオトコに…
他のオトコの事で、電話なんて
かけるのだろうか?…と、
いう事実に気がついた。
しかも、翌日に…。
その事実に気づいた瞬間
歯ブラシから手が離れる。
ダメだ…全てにヤル気が起きない。
洗面台に手をついて、
溜息をつく。
仕事も行きたくない。
欠勤の連絡をしようかと
本気で思い立ったのだが
流石に社会人としてどうなんだと
学生並みの思考回路を
即座に訂正し、再び身支度に
取り掛かった。
「おはようございます。」
朝のトレーニングを終え、
神島と、負傷中の柏木と並んで
事務所の扉を開ける。
「おい~っす♪」
今週も半ばにさしかかり、
郵便やら資料、請求書の山ができた
その人の向かいのデスクから
ご機嫌な様子で、佐藤係長は、
挨拶を返す。
「昨日は、早退してすまなかったな。
特に変わりは無かったか?」
すっかり復活したのか
上司の顔を見せるその男に
“何も”と答えながら、嫉妬心を
必死に抑える。