sound village



「それでは、お世話に
なりました。」


お釣りと領収書を
財布にしまいながら
窓口の人に会釈する。


“お大事に〜”的な返答に
再度、会釈をした時だった。


“柏木陽一郎さん”

白衣を着たお兄さん…
看護師さんだろうか?
聞き覚えのある名前を呼びながら
キョロキョロ周りを見渡して
いるのが見てとれた。



……同姓同名だろうか?


そんなに被る様な名前だとは
思えない固有名詞を
再度呼ぶその人の前に……

見知ったカオが現れた。


「…なんで…こんなところに…」


こんな時間にいるの?


夕方の診察が終了する時間帯
早退しない限り、ここに来る事は
出来ない。


その柏木くんは、白衣の人から
何か説明を受けながら数回頷く。
何か質問をして、返答を聞きながら
眉間に皺を寄せ、唇を噛み締める。
その後、2人は形式ばかりの
会釈をして、別れたけれども。



あんなに、感情を露わにするのは
珍しい。立ちつくして動かない部下に
腰を庇いながら、近づいた。











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