sound village
「レンちゃん、まだ全快じゃ
ないんやろ?
俺、社用車やし、送るよ。」
柏木くんの、そんな言葉も
「足があるから、大丈夫よ。
お気持ちだけ頂くね。
じゃあ、また。」
こんな子供染みた言い方で
ぶった切ってしまって。
…向かい合うチャンスも
食らいついて、吐き出させて
あげることも…
投げ出してしまった。
当然、足などあるわけもなく、
振り返る事なく、タクシー乗り場へ
向かい、車に乗り込み
行き先を告げた。
走りだした車内で
人の良さげな運転手さんと
世間話がはじまる。
「お見舞いですか?」
「いやぁ、ギックリ腰で(笑)
近場で、すみませんねぇ。」
自宅付近の路肩で降車して
ユルユル歩き、自室のある
賃貸マンションの敷地を
目指す。
駐車場に停まる車が視界に入り
うちの社用車と同じ車種だな
…なんて、思いながら部屋へ
進路をとりかけ、その車を
二度見した。
運転席のドアが開き、
降り立つ人物が誰だか気づき
目を見開いた。