sound village
モノ言いたげに、けれども
何も口をつかない俺に
レンちゃんは、続ける。
「ホレホレ、部活の時間だろ。
サボるな。辛いときコソ
手の内にある何かに、しがみつけ。
手離しさえしなければ、
ゴールっていうのかなぁ…
何て言うか、目指す場所が変わっても、
ずっと手の内にあるんだよ。
それが、マイクかボールかの
違いであるだけで。
私も昔、何があっても歌うと
誓ったのだよ。
だから、どんなにキツくても
歌ってるんだよ。
だから、キミも、踏ん張れ。
そうしたら、せめて…だけど
後悔しないよ。」
“…っつう事で、GO”…と
にこやかな笑みで以って
部屋を追い立てられた。
レンちゃんの抱えた過去は
見えなかったけど…
この人が引いたレールなら
途中で破壊しても
文句はない。
「柏木くん。忘れないで。
目指す場所は変えられるんだよ。
諦めてしまったら、おしまい。」
俺の目指す場所ーーーー
感覚的な何かが閃く。
「はい…。ありがとう
ございました。」
今までだって、ちゃんと
上司として一目置いていたけど
今日くらい、尊敬して
慕った日は無いかもしれん。
レンちゃん…
ありがとう。