sound village
「…とにかく、俺は。」
奴は、言葉を区切り、
ボールを放物線状に放る。
“ガツン”と鈍い音を立てて
リングにあたったボールが、
縁を辿りながら、輪っかの
中に吸い込まれる。
「…バスケを選んだ…
って、事やな。
“選んだ”…って言うより
優先順位がハッキリした。
コイツを受け取った時にな。」
そう言って、俺のカノジョが
視線を走らせている先の
紙切れを指した。
「…そうか。
早く、元に戻ればいいな。」
…音村係長の事は、
2番目だった…って事か?
思わず問いかけた言葉を飲み込み
差し障りのない返事をすれば
「元に戻すよ。やりたいことが
見えてきたのに、やれんとか
冗談やないからな。」
“多分、俺らの上司も、
ソレを望んでるやろ。”
そういって夜空を見上げて
柏木は、ほぉっ…っと、
長い息を吐いた。