sound village




旬報が発令された。

…佐藤係長からは、
妬み嫉みは覚悟する様に、
聞き流して問題を起こすなと、
クレグレも念をおされていた。


…が。



“何だか複雑だな。
半年前に歓迎会したばっか
だってのにな。”

“明日、一課だけで壮行会だと。
アイツら、このまま
向こうへ転籍じゃね?(笑)”


俺たちへの好奇心なんて
可愛いもんで。


…本当に、妬まれているのは、
係長達だろう。



“げっ?!また、音村
上がってんの?羨ましいねぇ。
俺なんていまだにヒラだよ?!”

“今まで通りの役職だろ。
部署異動じゃん。ただの。”

“何でアイツばっか…。
どおりで佐藤が一課に復帰
した訳だよ。”

“ムカつくなぁ”



勝手な言い草に唇を噛む。

一言物申すかと口を開きかけた
俺のスーツの袖を引く手に
振り返る。



「?」


振り返った先に誰もいない。


「…こっちだよ。」


苦笑まじりに
言葉を紡いだ相手は


「音村係長…。」


唇に、人差し指をあて
黙る様にジェスチャーして
彼女は、俺の前に立つ。


…そして。



「よう。同期のヒラ社員。
他に嫌味はあんのかよ?」



バッ…と、振り返る
引きつった面構えの面々に、
下衆な笑顔を作って
見せたであろうことは、
その小さな背中から
ビンビン伝わって
きたのだった。





















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