sound village



本当に、こんな馬鹿な騒ぎに
佐藤係長が加わった日には
大変な事になる。


「だあっ!もう!
降ろしてよっ!!」


利き腕側、肩と上腕で担いだ
音村係長は、うるさく
騒いでいる。


「今日、スカートじゃなくて
良かったですね。」


そう言えば…と、思い当たった
事実を言葉にしながら、
自分で言い放っておきながら
改めて、自分の頬や掌に感じる
上司の体温と香りにクラクラする。



誰も通らない見通しの良い
この通路は、俺達二人きりで。


直感的に、今しかない…と
暴れる上司を抱える腕に
力を込めて、その動きを
封じる。



「…斐川くん?」


ああ…


やはり、彼女は、鋭いヒトだ。


俺の動きから
何かを感じた上司は
訝しむけれど。


もう、譲れない。



ムードもクソもなくて
貴女を思いやれなくて
申し訳ないと思うけど
こんな機会は、きっと
もうないから。



「この間の…返事。

聞かせてください。」







誤魔化したりできない口調で
問いかけた。











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