sound village
腹をくくる ** side神島
「神島、斐川は?」
先輩社員の声に、
書類から顔をあげる。
「…あれ?!」
ちっ…あのバカ
どこで道草食ってんだよ。
さっき一緒に、資料室まで
係長から頼まれた書類を
探しに行って、戻って来た
ところだっていうのに…
数日前も、総務に行ったと
思っていたら、壁に張り付いて
音村係長を見つめたまま、
思いつめた顔してたしな(笑)
…あれは、アレで
面白かったから、いいけど(笑)
…しかし、こう続くとは
タルミ過ぎだ。
「斐川を呼んで来ます。」
また、音村係長の後でも
ついて行ってるんだろう。
「…そうは言ったけど…」
横目でホワイトボードの
音村係長の予定を確認する。
社内にいるとは言え
デスクを空けているとなると
居場所は、なかなか察しが
つかない。
取り敢えず、階段を降りた
階下の総務部を目指す。
俺たちの他には人見知りな
斐川の、唯一、友人的存在。
もしかしたら、
あのチビッコな先輩の所を
尋ねているかもしれないと
あたりをつけて、
踏み出した足は、階段を
数段降りた所で止める事となる。