sound village
「ねぇ。神島くん。」
背後からのチビッコの
息を切らせながらの
呼び掛けに振り返る。
「…何すか?」
…っつうか、俺のジャケットの
裾を摘んでるとか、
キサマはドコの乙女だよっ?!
「やっぱ、神島くんも
こっちには、帰って来ないの?」
その台詞に目を見開く。
「…いや…その…
みんな居なくなったら…
レンちゃんってさ…
俺なんかより、ずっと
意地っ張りで泣き虫だから。
…ああ、俺、
何言ってんだろね。」
そう言いながら、
ジャケットから手を離して、
気まずそうな笑みを浮かべる
チビッコの頭頂部を見つめつつ
彼が以前こぼした言葉を
反芻する。
「…他の2人は知らないけど
少なくとも、俺は、
絶対戻ってきます。
俺は、…多分、アイツらも
そうだと思うけれど。
啓太さんの思いには、
賛同してますから。」
“1年経ったら、復活します”
音村係長は、そう言った。
ならば、
俺も、そこに居合わせる。
そこで、例え、
後輩と横並びに
なったとしても
歯を食いしばって
付いていく覚悟はできている。
「そう…。そっか。
変な事を聞いてゴメン。
俺、バカだからさ。
俺1人じゃ、なかなか
レンちゃんの助けになんて
ならないから。」
まだ苦笑する小さな先輩に
更に宣言する。
「そもそも、アンタは…
俺に言わせれば、
バカでもないし。
何度だって言うけど、
俺は、ココに帰ってくる。
まだ、何にも成し得て
いないんだ。
ちゃんと、帰って来る。
だから、それまで…
面倒臭い事山の如し
…でしょうが…(笑)
うちの係長二匹を
お願いします。」
そう言って、頭を下げれば
「うん!待ってるから
頑張ってきてよね。」
…割と最近、カノジョに
渡米の話を告げた時と
全く同じ台詞を返されて
微妙な気持ちなった(笑)