sound village
後ろ髪引かれまくり** side柏木
「ほら、柏木。」
本日、何人目かの酌。
「…ああ、はい。
ありがとうございます。」
気を抜けば、考え耽そうな頭を
内心慌てて切り替えながら
軽く会釈して、そのグラスを
口にしてから、
ビールをグラスに注ぎ返す。
神島を可愛がるこの先輩は
テルテルとレンちゃんの
同期でもある。
「珍しく酔ったのか?
お前、3人のうちじゃあ
一番強いだろう?」
“やっぱ、このスケジュールじゃ
疲労も溜まるかぁ。”…等と
ボヤきながら苦笑するこの人は
あの2人に比べて、容量も悪いし
センスもちょっと劣るけど
物凄くいい人で、俺らも
相当、頼りにしていた。
「酔うた訳じゃないです。」
そういった俺に、
ちょっと考えた風に
言葉を続ける。
「じゃあ、何か
気掛かりでもあるのか?
…柏木の事だから、音村の事?」
そう言って、クスッと笑う。
…何、それっ?!
俺の頭の中
レンちゃんの事しかないと
思ってるやろう?!
…まあ…確かに
違わんのやけど。