sound village
「あれ?じゃあ、ボール
お前のツレに預けりゃ
良くない?」
バスケ好きの野郎に
ボールを預けるなんて
当然思いつくだろう。
だけど。
「それは、啓太に預けるって
決めているんだ。」
人付き合いの苦手な
自分にできた社会人初の友人
兼小さな先輩に。
…これを預けたいなんて
この会社に対する
未練なんだろう。
全く、俺は情けない人間だ。
手に入れた物を
手放したくなくて
直ぐに迷ってしまう。
でも、きっと、啓太なら
立ち止まる俺を嗜めて
叱って、背中を押してくれる
ハズだ。
だから、俺は、
啓太の記憶に自分の事を
留めて置きたいんだ。
俺という、ヒヨコ社員が
いたということを…
完全なる、自分自身の
甘えだけれども。