sound village
「バナナは、オヤツに
入らないからな!」
コンビニに向かい
歩き出した啓太の背中に
テルテルは、叫ぶ。
「いえっさー!」
こちらを振り返り
手を振る啓太を、
付近を歩くリーマンが
驚いた表情で見ている。
もう、ホント、啓太は
可愛くて仕方がない。
思わず、笑みが零れる。
もちろん、今まで預かった
部下達も可愛かったし、
今年預かった三匹も然り。
…しかり…。
…帰ってくるだろうか?
…後悔や、思い残す事なく
やり遂げて来てくれる
だろうか…?
「音村。」
タバコの煙を吐き出して
テルテルが呼ぶ。
「ん?」
短く返せば
「アイツら、ちゃんと
帰ってくるかな…」
珍しく、こちらを見ない
寂しがりな目尻。
「…わかんないけど…
戻って来たら…
もし戻ってきたら、
来年の新卒に劣らない様に
してあげないとダメだな。」
能力が原因なら別だけど、
ブランクが原因で
追い抜かれる事が
ない様に。
…テルテルのバカ。
しんみりした事言うから
私まで、鼻の奥がツンと
するじゃないか。
間も無く決壊しそうな
双方の瞳にハンカチを当て
水分を吸い込ませる。