sound village


どうせ、電車はない。

俺の借りてるアパートの
最寄駅は隣。一駅間、
歩くのはきついけど…


…道中、家まで半分の所に
レンちゃんの住んでる
マンションがある。


せめて、それくらい
遠目で拝んでもいいやろ。


若干、自分の病的発想に
気まずい思いをしながら
もし、バッタリ出くわしたら
とか…考えて、心拍数が
乱れる。


…この建物や…


あるマンションの敷地入口で
足が止まる。

さすがに部屋の灯りなんか
分かる訳ない構造で。

まさか、こんな時間に
お宅訪問する訳にいかず。



でも、一目会いたくて…



徐にスマホを取り出す。

いや…マズイやろ…


でも、やっぱり会いたい。

メモリを検索して
レンちゃんの業務用携帯の
番号を呼び出す。


まさしく、発信ボタンを
タップしかけた、その時…

ヒールがアスファルトを
打つ音が近づき止まった。


「あら。…1号じゃない。」


見上げてくる意思の強い眼差し


「…げっ…おねいさん…。」

思わず、口元を掌で覆う。

「“げっ”とは、何だ?(笑)
“げっ”とは?」


流石は、レンちゃんの友人。
数度目の顔合わせにも関わらず
そんな台詞と共に、鳩尾に、
軽い一撃を喰らい違う意味で
再度、口元を覆う。


































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