sound village
喉に酸味を感じ涙ぐむ。
そんな俺を横目に、
缶ビール一箱を肩に担いで
おねいさんは、何ともない
様子で歩みを進める。
…スゴイ体力やな。
普通の女子なら見せん姿やろ。
これは、チビッコが言うてた、
夜通し飲み明かされる獲物やな。
「…運びましょうか?」
恐る恐る尋ねた俺に
「ああ。私、前職、
内装業の施工管理してたの。
この位、訳ないのよ。」
“もっと重い資材なんて
ザラにあるのよ”って、
彼女は、小指を立てて
“オホホ”と、胡散臭く笑う。
「さて、…1号。
今日は、帰りな。そして、
思いを告げるのは、
帰還する迄我慢なさい。」
見透かされてる。
「今、何を言っても
レンちゃんの意志が
動く可能性は皆無よ。
ほれ、お行きなさい。」
肩にビールを担ぎ、
ビシッと接道を指差す
姿が何とも言えずシュールや…
この、レンちゃんが一目置いてる
女帝を敵に回す等、愚の骨頂
渋々、オネイサンに会釈して
その場から足を進めだした。
「あ。レンちゃん?真月です。
そこまできてるから、ドア開けて?」
“レンちゃん?”
…その名に反射的に
真月さんを振り返った。