sound village

動き出す時**sideレン




『レンちゃん

俺のこと、好き?』




あの言葉があったから
私は、素直に
言えたのだと思う。



彼は、いつだって
私を守ろうとしてくれた。

…私、一応、
上司だったのですけど…


彼らが旅立ってから
もう少しで、半年経つのに
こうして、思い出す事が多い。


…正直、そんな事
してる余裕なんて
ないんだけど(涙)


「ぅがあ…っ。」

手元の経営会議の資料を
握りしめ、声を漏らす。

隣の席の品行方正な
お嬢さんが、その声に
ビクッと体を震わせた。


「あ。ごめんよ。つい。」


心の声が漏れた。


ここの仕事は、今更ながら
非常に、私には不向きである。
さっさと向こうとの提携内容を
整理して営業に戻るに限る。


三人を見送った翌日から
私は異動して、社長室秘書課に
間借りで机を並べている。


…が、完全アウェイである。


一応、例の事業統合専門と
会長から社命を得ていたが
実際、此処に座っている限り
そんな訳にいかず…


業務秘書代わりに、
こき使われる羽目に
なるわけだ。

























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