sound village
『は?…異動から半年経つよね?
歓迎もしてなかったよね?
今更、親睦会もないでしょうが。』
私のすぐ背後、頭上から響く
低くてオトコっぽい声。
…一瞬、自分の心を
読まれたかと思った。
まさしく、オトナなんだから
コレをもう少しやんわりと
言い換えねばと思案した所
だったから。
「「!!!」」
おお、流石は、秘書課の皆様
英語はお手の物らしい。
ザワザワしているところを
みると、どうやら
招かざる客の爆弾発言を、
理解した様だ。
…それはそれで面倒臭い。
『リヒト』
何故コイツが此処にいる。
…父親と後妻の息子が
経営する会社の超天守閣に
一番近いフロアに
どうやって入った!?
『ああ。レン、彼女
何かに似てると思ったら…
むかし、俺の家にあった
人形に似てる。』
…人形…
イヤな予感しかしない。
一見、イケメンから
“人形”と呼ばれ、
バービードールでも
思い浮かべて
いるのだろうか?
ソワソワしている
そこのコケシよ…
満更でもない顔を
していないで、
今すぐ逃げろ。
経験上わかる。
このタイプはロクな台詞は
吐かないっ!!
…まさか…空気嫁とか
言わねーだろうな?!
『そうだ!思い出した。
レン、コケシだよ!!!』
言ったよっ!!
言いおったっ…つうか
叫ぶなっ!!!
ハラハラしていた私の
思いは、一瞬で
現実のものとなったの
だった。