sound village

スロースターター**side斐川

  



…このくらいでいいだろう。
ストレッチもソコソコに
徐にボールに手を伸ばす。


「斐川、サボるなよ。」


すかさず、神島の忠告が飛び


「うるさい。」


自覚あることを忠告されると
何故、人はどうして
口答えしてしまうのだろう。

そして…


「痛っ!!」


…どうして、神島は
いつも手が早いのだろう。
後頭部にペチッという鈍い音と
同時に衝撃が走りムッとする。


「悪ぃ~な。瞬発力も
反射神経もよくって♪」


「俺の心を読むな!!」


キッと睨むと


“怖くねぇよ。ガキ”
…と、鼻で嗤われる。


…そう。俺はガキなんだ。


渡米して、よく理解した。


“末っ子体質”


ここは、日本のように甘くない。


俺の様に、感覚的に物事を捉えて、
時間をかけて意思を噛締めていく様な
生き方の人間には―――――――


特にビジネスにおいては、
この国は合わない。


物の嗜好、自分の意思を
タイミングよく、明確に掴めない事には
スピード感が合わずに出遅れてしまい
実績を残すことなどできない。
  


  

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