sound village
  


日本では、所詮は新人だと
何の役にも立てない俺達を
育成するカリキュラムを組み
教育してくれるけれども。


既に備わった己の能力を雇用する
この国に、そんな甘さはない。


故に、常に、俺のフォローを
してくれている柏木も神島も
自身に求められる職務の遂行で
精一杯の様子だ。


言わずとも、俺の性格を見抜き
察してくれる音村係長も佐藤係長も
ここにはいなくて。


仮にプロに成れようとも、
現役を退いた後に残る何かと、
残りの人生設計を考えたときに
俺の生活の基盤は日本だと
改めて認識する。


…そして、その時


きっと、この国は
俺のような人間に対して
価値を見出さない。


自分でも驚いている。


会社を辞めてまで、
もう一度プロに挑戦することを
考えたというのに。

ここで、挑戦したいと思ったのに。

浅はかにも、上司に相談までして
思いとどまる様に言われたというのに。


ここへ来る機会を
設けてくれたというのに。


まさか…期日がくれば
あの部署へ戻る事を決めるなんて。


更に、一番ここに来ることを
嫌がっていたはずの柏木が
転籍の意志を固めるなんて。


  









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