sound village
秘めたる決断 **side斐川/
気持ちが揺らぐーーー
なんで、どいつもこいつも
俺の覚悟を覆そうと
するのだろう…いや…
覆る時点でーーーーー
迷いの生じる時点で
覚悟なんてものを語る
資格すらない。
「くっ!」
自分の身長の遥か上に
伸ばされた手を
必死に避ける。
「甘いな!斐川!」
5年ぶりの同級生達は
芯を貫いてきただけあり
体力も敏捷性も更に増して
もはや、対等にプレーなど
できなくなっていた。
普通であれば、
同じ場所に立てる
事など無いのだと
身を以て知る。
ボールを送った先の
神島もまた然り…で。
あの頃より、
体格も出来上がり
技巧的になった2人の
ディフェンスを振り切れず
ドリブルどころか、
スリーすら諦めて送球した。
当然ながら惨敗で……
頭からタオルを被り
コートの隅に座りこむ。
ーーーーーいまーーーー
負けて“当然だ”と、
思ったよな。
……俺は……
マズイな……普通に…
ゲームをする人間として。
圧倒的な力を有する者に
思考から屈するなんて。
アスリートになる
以前の問題じゃないか。