sound village
「何のために、
ここへ来たんだろう…」
自分で情けなくなって
独り言ちれば
「そんなの、仕事に
決まってんだろ。
そのついでに…
去年の自分の選択が
正しかったって、
実感するために
決まってんだろ。」
“バカだな”と、神島は笑う。
「でも…
一度は、辞めるとまで
言ったのに……」
「もどるって言ったら
音村係長と佐藤係長は
喜んでくれると思うけど?
ライバルも減るみたいだし?
戻るのも楽しみだと
おもわないのか」
スポーツドリンクを
飲みながら、神島は気楽に
言うのだが…俺には…
「…ライバル…
それは減るように
到底、思えない。」
結局、俺は、体格も技術的な事も
柏木より秀でていたのに
決断力と行動力が、決定的に
ヤツに劣ったのだ。
いや、それだけじゃない。
柏木に負けただけじゃない。
俺は、いつも、自分じゃ
何も動かなかった。
無い物を欲しがっていただけで、
それを目指していたただけで。
実のところは、自ら望んで
何かを欲したことは
無かったのだ。
只々、器用に生きていた
だけだったのだ。