sound village
  


「全くアイツは…」


溜息混じりに溢した会長は
微妙な表情を私に向ける。


「大きな声では言えない事だが。

あの日、経営会議で
この移管先企業ついて、
提案してくれた事に…

私は一人の父親として
君と佐藤君や…
君の部下達には感謝している。

リヒトと、次男…社長が
上手くやっていく未来なんて
私には見えなかったから…ね。

リヒトは、離れていても息子だ。
互いに寄り添えなかったとはいえ
憎しみあって別れた訳でもない
大事な家族だからね。

私達…バラバラだった家族に、
ささやかな繋がりをくれて
ありがとう。」


そういって、私に対して
頭を下げた会長に

私達は…この創業者一族に

踊らされたのだろうか?

たまたま、家族間の会話と
私達の目論見が、たまたま
利を得る所に、落ち着いただけ
なのだろうか?


整理の付かない気持ちのまま
会長の頭頂部を呆然と見ていた。



 


 




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