sound village

婚活リップ**sideレン




「また、ご指導
宜しくお願いします。」

そういって90度に前傾した
斐川くんの頭は、丁度
私の胸元あたりの高さに
あった。

…1年経っても、デカい。

そして、口をついたのが
謝罪では無くて良かった。
彼の中に燻っていた
不完全燃焼は、成仏できたの
だろう。

「お帰り。待ってたよ。」

目の前の頭髪を、テレ隠しに
ワシャワシャ撫でる。

「…私は、あと半年
戻れないんだけど。
テルテルにキッチリ
鍛えてもらいなさい。」

そう伝えれば
頭を上げる際に交えた瞳が
狼狽えて見せる。

「漸く、移管内容がまとまった。
今は契約書の締結の準備中。
君達の上司に戻るのは
それを終えた後だよ。

でも、何かあったら
いつでも相談にのるし
最大限、寄り添うよ。」

そう言えば、いつもは
無表情な斐川くんが
頰を赤らめて唇を
キュッと結ぶから…

…おねえさんは
超絶に…萌えます。


しかしながら、
色恋に走れる立場でも
状況でもない私は

そこからどうにか
するでも…

出来る訳でもなく…

どうして、彼では
なかったんだろう…









  

















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