sound village
『…多分、そういうのは
やってないと思う。
あの人、超アナログ人間やし
できないと思う。
そもそも、持っていても
皆には見せない。』
誰がお前らになんぞ
見せてやるか…
『何でだよ?』
決まってるやろ。
『敵は少ない方がいいに
決まっている。』
そういえば、同僚達は
一瞬静まるけど、やがて
“自信がないのか?ヨウ。”
“意外と初心なんだな”等と
冷やかし半分で笑われる。
『…そんなに彼女のことが
好きなのか?』
居心地の悪さに、
コーヒーを飲みに行くふりをして
席を外せば、隣に並び歩いた
アントニオがそう尋ねる。
思わず2m近い長身を見上げる。
『…ああ。めっちゃ好き。』
『そうか。それで?
ライバルがいるんだ?』
なんでそんな楽しそうに
聞いてくるわけ?!
『…強敵。俺のもう一人の…』
…ああ…転籍したんだったな。
もう、上司と呼べへんな。
あんな破天荒な男やったけど
おもろい人やった…上司としては。
いつか、一緒に仕事できれば…と、
思わない訳でもない。
『…元上司も、斐川も恋敵。』
男としては、奴らの内の誰かに
攫われへんか、実のところ、
毎日気が気じゃない。