sound village
 


『あれ?リヒトはノーカウント?』

そういって、アントニオは
クスクス笑う。

『リヒトは俺をからかって
遊んでるだけ。』

面白くない気分で
溜息混じりにそういえば。

『じゃあ、早くリハビリ終えて
ムコウに着任しないとな。
まだもう少しかかるんだろ?』

等と、うまく話題を逸らして
くれた。全く以って、
空気の読めるオトコや。

『もう一般生活は支障ないよ。
バスケやるには、もうちょっと
かかるかなぁって、感じ。
早く皆とゲームしたい。』

現在の状況を説明しながら
焦る気持ちを持て余す。

こんなに上手いプレーヤーが
ウジャウジャいるっていうのに
毎日、コートを眺めるだけ…

想像以上に苦痛…。

『大丈夫。ヨウイチロウ
君の膝は、絶対に治る。
そうしたら、絶対対戦しよう。

だから今は焦るな。
バスケの事も、レンの事も。』

挽きたての芳しいコーヒーの
香りが漂う紙製のカップを
一つ、こちらへ手渡しながら
アントニオはその日が楽しみだと
そう言って笑顔を溢した。



  





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