sound village
「斐川の場合は、興味が無い
相手だから、覚えていないだけ
なんだろ(笑)」
神島が苦笑する。
それもあるが…
覚えたい事もやるべき事も
沢山あって、毎日の業務が
若干キャパオーバー気味だ。
つまらないことは、記憶に
残らない。
次の新卒の入社時期も
近づいている。
俺たちは、他の同期社員と違って
貴重な海外勤務の経験もさせて
もらったけれども、その期間
そいつらが、当たり前に
習得していた経験や何かが
不足しているのも理解している。
焦りが無い訳がない。
それを取り戻し追いつくべく、
口には出さずとも、神島も俺も
日々必死だ。
それを佐藤係長や他の先輩方も
理解してくれているからこそ、
少し難易度の高い取引を
俺たちに担当させ指導してくれて
いるのだと思う。
「神島君。斐川君。こっちだよ。」
少し先を歩く啓太が、
建物の角の辺りで振り返り
俺たちを呼び手を振る。
「ああ。直ぐ行きます。」
神島が目元を緩め、
それに答えた。