sound village
係長達が、連れて来てくれたのは
隠れ家的な、こじんまりとした
雰囲気のある一軒の定食屋だった。
「こんな所があったんですね。」
趣のある佇まいに、ポツリと
つぶやけば。
「そぉだよ。ここの出汁巻き卵が
凄くおいしいのだよ。
お吸い物もウマイぞぉ。」
某ブランド物の長財布を、
口元に寄せた音村係長が
こちらを見上げ、ご機嫌にいう。
…もう、恋愛感情は…
多分無いけど…
こういう表情は、罪作りに
無邪気で可愛い。
「それにしても、二人の顔見るの
何だか久しぶりだね。
総務部は頻繁に顔を出すから
啓太達は良く会うんだけど。
あ。お先にどうぞ。」
座敷に案内され、靴を脱ぐため
土間に置かれたベンチに
神島と並んで腰を下ろした。
「!!」
頭にふんわりと感じる重み。
俺達の前に立つ音村係長が、
頭をポワポワ撫ぜていて。
横目で捉えた神島は、最早
耳まで真っ赤に染まっている。
「同じ社屋にいるのに
二人に中々会わないねぇ。
…君達、無理してんだろ。
顔が疲れてるよ。
好きなもの、たくさん食べな。
お姉さんの驕りですよ。」
そういって、
優しく撫ぜてくれるから…
不覚にも、俺まで目尻が
熱くなって動けなくなって
しまったのだった。