sound village
「ああ…うめぇ…
二日酔いに効くなぁ…」
「…だよねぇ。安定の味。」
テルテルと二人
変わらぬ美味しさの味噌汁に
ウンウン頷けば。
「レンちゃんも佐藤係長も、
老けたんじゃない?
好みもアッサリしてきたし。」
唐揚げを頬張りながら
啓太が半笑いする。
「そりゃそうだろ。
お前、俺たち幾つだと
思ってんのよ。」
そう言ってテルテルが
ほうじ茶入りの湯飲み茶碗を
恐る恐る口元へ近づける。
「ちょっと、テルテル…」
「あぢぃっ」
忠告が遅かったか。
コイツの猫舌は健在だな。
「ほら、おばかちゃん。」
グラスに水を注ぎ
手元に置いてやる。
「さすが、お母さん。
行き届いているじゃない。」
「誰がオカンだよ。こんな
手のかかる息子は要らない。」
「あのぅ…」
私達の下らない遣り取りに
割って入ったのは、啓太だった。
「何?」
相変わらず緩い返事だな。
テルテルよ。
「噂で聞いたんですが…
佐藤係長、結婚するって
本当ですか?」
啓太の突然の切り込みに
「はっ!?」
「えっ!?」
「!!!!!」
思わぬ啓太の問いに
私も神島くんと斐川くんも
目玉が飛び出るくらい驚き、
声を上げた。
否、斐川くんに至っては
完全にフリーズしている。
……えっ……
何ソレ!?!?!?
初耳なんですけど!!!!!!
「ああ…広まっちゃった?」
知らねえよ。
っつーか、何で、
こっちを見て
楽しそうに含み笑いを
浮かべている訳?
「そうなんだってさ。音村。」
びっくりし過ぎて
最早、声も出ない。
いつかこんな日が来るとは
思っていた。
わかっては、いたんだけど。
「ああ…。そうなんだ?」
現実、こんな風に聞かされたら
狼狽えてしまって
曖昧に笑う事以外に
反応ができなかった。