sound village
速やかに元の小箱に名刺を
戻して、鷲掴み、平静を装い
スッと立ち上がる。
“ちょっと、総務に
行って来ます。”
まさしく、そう言おうと
した時だった。
階下からドアがバンッと
閉まる音がして、通路を
バタバタと走る音が、
尋常ではない速度で、階段室に
反響し、あれよあれよと
いう間に、事務所の扉に
到着した。
「音村係長!!」
バンッと開かれた扉と共に
名前を絶叫され
「はいいいいいっ!!」
思わず絶叫で返してしまう。
「すいません!とんだ失態を
犯してしまいましたっ!!
いや…やらかしたのは
研修中の…外国人一派
なんだけど!」
あ?びっくりした…
啓太じゃん??
呆気に取られる周囲は
無言となり、静まり返る
事務所に、別の声が響いた。
「レンちゃん!!」
……えっ?
なんだか懐かしい呼び声と一緒に、
黒い塊が覆いかぶさって来た。
「会いたかった!!」
逆光でよく見えない
その黒い塊の腕が、
ギュ―っと私を抱きしめる。
ガッシリした、その肩に、
かろうじて私は顎を乗せた状態で
居て、耳元で直接空気を震わせる
声にハッとした。
「…もしかして…
柏木くん…?
…柏木君なの?」
そうだとも、違うとも
言わないその人は
ただ
無言で何度か肯定する様に
首を縦に振るのだった。