sound village
思わず、その背中に
腕を回しそうになって
生唾を飲み込む。
…いや、いかん…
ココは会社なのだよ。
応えてどうするんだ。
単純に殿方に抱きしめ
られる事も、
柏木君のセクハラ攻撃も、
久々過ぎて、こんな時
どう、対処していたか
わからなくなる。
そろそろ、この場の
空気を何とか収めないと
…と、脳内パニックを
起こし始めた時だった。
「ムスコよおっ!!!」
そんな場違いな叫びと共に
柏木君と私を抱きしめる様
ガシッと肩に衝撃加わる。
「痛ってぇ!!!テルテル、
どさくさに紛れて
横腹、蹴ったやろ!?」
「照れるなよおっ!
っつうか、お前が、
テルテル言うな!!」
そんな言い合いを聞くのも
久しぶりだ。…2人とも
照れてるのが微妙に可愛い。
思わず、苦笑を浮かべ
2人のやりとりを眺める。
いつもは、なるだけ頭の隅に
追いやっている、懐かしくて
賑やかで愛おしい日々を
こんなんだったと思い出す。
メランコリックというよりは
元気でやっていそうな
数年ぶりの柏木君の姿に
今日は久々に楽しいお酒を
飲めそうな気がする。
だけど……
「柏木!うるさい!!
そもそも、俺の音村に
気安く触るな!この野郎!」
テルテルが放った
いつも通りのセリフに
柏木君が表情を歪めた。
…誰が、キサマの音村だ。