sound village
まさかのサプライズ**side斐川/
柏木が、移管作業の一環で
一時帰国することは知っていた。
…本人から聞いていたから。
それを、係長達に言わなかったのは
…柏木が口止めした訳でも無く
単純に、俺の…ヤキモチだ。
それに、俺が言わなくても、
神島が言ってしまうだろうという
見当もしていた。
だが、蓋を開ければ
柏木が一時帰国することを
音村係長達に伝えた人間は
俺を含め、一人も居なかったのだ。
当然ながら、関連会社社員の
来社情報など、詳細について
出回る訳もなく、当社としては
柏木の一時帰国など知る由も
無かったという事だ。
昼時を告げるチャイムが鳴る。
「音村係長。休憩に行ってきます。」
出先の神島から、昼飯に誘われて
いた為、移動時間を見込んで
早々に席を立つ。
「音村係長…?」
パソコンのモニターを難しい顔で
無心に見つめる係長に、改めて
確認の声をかけた。
「んっ!?はいっ!?」
ハッとした様に反応を示した係長に
再度用件を告げれば、フニャっと笑み
ゆっくりして来いと言われる。
「…係長も、一緒に行きませんか?」
最近、この人は、また昼食をロクに
摂っていない事は、知っている。
そのうち、真月さんにチクッてやる
つもりでいたが、連れ出せるモノなら
…との気持ちもあり促す。